か行 | 刑事弁護に関する用語集 | 逮捕・勾留など刑事事件の弁護士はアディーレ法律事務所

刑事弁護に関する用語集 か行

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過失犯 [かしつはん]

簡単にいうと不注意で犯罪を行ってしまった場合を指します。以下,少し詳しく説明します。

まず,過失とは自分の行為がどんな結果になるのか予測できたにも関わらず,そのような結果が引き起こされないようにする義務を怠って,結果を発生させてしまった場合をいいます。

そして,かかる過失を犯してしまったことを内容としている犯罪が過失犯です。

例えば,昼間の見通しの良い道路で自動車を運転中に,わき見運転をして通行人をはねて死亡させてしまった場合には,業務上過失致死罪が成立します。

他方,夜間に車を運転中に,対向車線から酒に酔ってライトもつけずにセンターラインを越えて走ってきた車に衝突してしまい,運転していた運転手が死亡してしまった場合には,ライトもつけず酒酔い運転の車が向かってくることは予想できず,事故を避けるのは不可能であるので,過失が認められず業務上過失致死罪は成立しません。

過剰防衛 [かじょうぼうえい]

急に襲ってきた相手に対し,自分や周囲の人を守るためにやむを得ず反撃をしたものの,その反撃行為がやりすぎであった場合をいいます。

例えば、突然素手で襲ってきた暴漢に対し,自分の身を守るために,持っていた拳銃でこの暴漢を殺してしまった場合,素手に対し拳銃は明らかに過剰,やりすぎと評価できるので正当防衛は成立せず,過剰防衛が成立します。

このように反撃がやりすぎであった場合には,正当防衛は成立せず,無罪とはなりません。しかし,暴漢に襲われたというような緊急事態には恐怖から多少の行き過ぎな行為を行ってしまうのが通常であることから,過剰防衛として裁判所の判断により刑が軽くなる場合があります。

家宅捜索 [かたくそうさく]

警察や検察などの捜査機関による現場検証や被疑者の取調べが進んでいくと,犯罪の全体像や事実関係が見えてきます。しかし,現行犯逮捕でもない限り,被疑者と犯罪とを結び付けるには,さまざまな物的証拠を集めることが必要です。その捜査のひとつにテレビの刑事ドラマなどで登場する「家宅捜索」と呼ばれるものがあります。

これは,被疑者の自宅や事件に関係した施設などから証拠品を探すのを目的としたものであり,家宅捜索の実施に際しては,裁判官による捜索許可状という令状が必要になります。捜索許可状には,家宅捜査を行なう場所と捜索の範囲が記載されています。捜査許可状が発行されると,捜査対象となる住居などで家宅捜索が始まります。刑事ドラマなどで家宅捜索の対象者に令状を示すシーンをご覧になったこともあるかと思います。

家宅捜索で見つけ出された証拠品には,差押えが行われます。差押えも,家宅捜索許可状と同様に,裁判官が事前に発行した差押許可状に基づいて,証拠を確保します。犯罪の種類によって差し押さえるべき証拠品は異なりますが,この場合,差押許可状に記載された差し押さえるべき物に限って差押えが可能です。

捜査機関が証拠品を押収する手段には,ほかにも,そのときの現場の状況に応じて所有者または保管者に任意での提出を求める「任意提出」や,逮捕の際に,任意提出を拒否したり,証拠品を隠したりする可能性のある場合に令状なく行う強制的な差押えなどがあります。

家庭裁判所 [かていさいばんしょ]

家庭に関する事件の審判(家事審判)及び調停(家事調停),少年の保護事件の審判(少年審判)などの権限を有する裁判所をいいます。

地方裁判所などにおける裁判は原則公正を期すために広く公開されますが,当事者のプライバシーに配慮して原則非公開で裁判手続が進行します。
各地方裁判所とその支部の所在地に設置されています。

仮釈放 [かりしゃくほう]

懲役または禁錮といった刑罰の確定裁判を受け,その刑罰が執行され,刑事施設に収容された受刑者が,その刑期の期間満了前に,刑事施設から一定の条件の下に釈放され,社会生活を営みながら残りの刑期を過ごすことが許されるという刑事政策上の制度です。

懲役9年といった有期刑の場合にはその刑期の3分の1を経過したとき(この例であれば3年),無期刑の場合には10年を経過すると,法務省所管の地方更生保護委員会が,本人の資質,生活歴,矯正施設内における生活状況,将来の生活計画,帰住後の環境等を総合的に考慮し,悔悟の情,再犯のおそれ,更生の意欲,社会の感情といった4つの事由を総合的に判断し,改悛の状が認められ保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると判断すれば、刑事施設から仮釈放されます。

仮釈放を受けても完全に自由の身になるわけではなく,残りの刑期を,社会の中で保護観察を受けて遵守事項を守りながら過ごすことが許されているという状況です。

したがって,仮釈放中に更に何か犯罪に手を染めてしまった場合等には,仮釈放は取り消されてしまい再び刑事施設において刑に服することとなります。

科料 [かりょう]

1000円以上1万円未満(つまり、9999円以下)を強制的に徴収する刑罰です。

日本の現行刑法における主刑でもっとも軽い刑罰で,暴行罪・侮辱罪といった軽微な犯罪に対して科されます。軽微な刑罰ではあるものの,検察庁保管の前科調書には記載され,前科となります。

間接正犯 [かんせつせいはん]

直接自分で手を下さず,他人を道具のように利用して犯罪を実行することをいいます。たとえば,医師が患者を殺そうとして,何も知らない看護師に薬だといって毒物を注射させ,その結果患者が死亡した場合に医師につき殺人罪が成立します。

前述の医師が,殺人罪に問われるのは他人(先ほどの例では看護師)を自己の意のままに使ってその動作や行動をあたかも一種の道具として自己の犯罪に利用しており,自ら手を下して実行行為をしたのと同様に考えられるからです。

鑑定 [かんてい]

裁判所または捜査機関が委嘱をした学識経験者が行う,特別な知識や経験が必要な法則またはその法則を具体的な事実に適用して得られた判断の報告をいいます。

刑事手続においては,科学の進歩とともに客観的な資料を作成するために様々な鑑定が行われています。代表的な鑑定の手法として,血液鑑定,DNA鑑定,筆跡鑑定,精神鑑定などが挙げられます。

鑑定留置 [かんていりゅうち]

被告人の心身や身体に関して,鑑定人に継続的に観察,あるいは処置をさせる必要があるとき,鑑定をさせるにあたって,裁判所が期間を定めて被告人または被疑者を病院その他の場所に留置することをいいます。

鑑定留置の大半を占めるのは,殺人罪や現住建造物等放火などの裁判員裁判の対象事件となる重大な犯罪です。

裁判員裁判が開始されたことにより,公判で裁判員の負担を軽減するために責任能力が問題となりそうな事件ではとりあえず鑑定留置をするという傾向ができたことがその理由として挙げられます。

鑑別所 [かんべつしょ]

正式には,少年鑑別所(少年院法16条)といい,少年の収容施設です。

その役割は,少年法17条1項2号の規定により,家庭裁判所から送致された者を収容すること及び,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識に基づいて,少年の資質の鑑別を行うことにあります。

既遂 [きすい]

犯罪行為に取り掛かってこれを遂げ,犯罪を完成させることを言います。未遂と対立する概念です。

例えば,殺人罪であれば,包丁で刺す行為により被害者に致命傷が生じ,死亡するという結果が生じた場合には,殺人罪が既遂に達したと認められます。

これに対し,包丁で刺したにも関わらず,被害者が一命を取り留め,死亡という結果が生じなかった場合には,既遂ではなく未遂が成立することになります。

刑法は原則として,犯罪を処罰するには犯罪行為から結果が生じること(既遂に達すること)を要求しています。しかし,殺人罪や放火罪等の一定の重大な犯罪については,結果が生じなくとも,犯罪行為を行って結果発生の現実的危険性を生じさせたことにつき処罰されます(未遂)。

起訴 [きそ]

公訴を提起することをいいます。
そして,公訴とは検察官の特定の刑事事件について,裁判所の審判を求める意思表示をいいます。

刑事訴訟法では,全国一律の基準による公平な起訴権限の行使を確保するために,検察官のみに起訴する権限を与えています。

そして,検察官は起訴を行いますが,犯罪を行った疑いが明白であるにもかかわらず,その性格,年齢および境遇,犯罪の軽重および情状並びに犯罪後の情状により裁判所の審判を求める必要がないと判断した時には,その裁量によって不起訴とすることが認められています(起訴猶予処分)。

これは,起訴猶予とすれば裁判手続による社会的・経済的負担を受けず,社会復帰・更生が容易となること,被害者その他の関係者が処罰を望まないのであればあえて訴追をする必要もないことから認められており,多数の事件が起訴猶予で終了しております。

起訴猶予 [きそゆうよ]

犯罪を行った疑いが明白な場合において,被疑者の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重および情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときに検察官が行う不起訴処分をいいます。

これは,起訴猶予とすれば裁判手続による社会的・経済的負担を受けず,社会復帰・更生が容易となること,被害者その他の関係者が処罰を望まないのであればあえて訴追をする必要もないことから認められており,多数の事件が起訴猶予で終了しております。

起訴猶予で事件が終了した場合には,前科にはなりません。

逆送 [ぎゃくそう]

家庭裁判所は,検察から送致された少年(20歳に満たない者のこと)が起こした事件について調査しその処分を下しますが,その下す処分のひとつとして,家庭裁判所がその調査の結果,起こした犯罪の重大さ,情状等に照らして刑事処分が相当と認めたときに検察官に再び少年を送り返し,成年と同様の公開の刑事裁判を受けるよう求める処分をいいます。

16歳以上の少年の故意の犯罪行為によって,被害者を死亡させた場合には原則的にこの「逆送」の処分が下されます。

家庭裁判所が「逆送」の決定を行うと,検察官は刑事起訴を行う義務を負い,刑事裁判所で刑事裁判が行われます。

もっとも,成年と同様の裁判が行われるものの,少年の可塑性(かそせい)・要保護性という特殊性から,不定期刑の宣告や,18歳未満で犯した事件に関する場合は死刑や無期懲役は減刑されるといったことが認められています。

求刑 [きゅうけい]

刑事裁判の手続のうち,検察官が事実や適用される法律についての意見を述べる(論告)に際し,検察官が被告人に相当と考える刑罰の適用を裁判所に求めることをいいます。

裁判実務では,検察官が論告の最後に「以上諸般の事情を考慮し,相当法条適用の上,被告人を懲役○○年に処するを相当と思料する。」などの形式で求刑が述べられることが多いです。

もっとも,検察が起訴した犯罪に対する法の適用は裁判所の専権であるため,裁判所は検察官の意見にすぎない求刑には何ら拘束されません。したがって,判決で検察官の求刑よりも重い刑が科されることもありますが,一般的な量刑相場では,実刑判決の場合は求刑の7掛け,8掛けが判決の目安とされています。また,執行猶予判決の場合は求刑をそのまま容れた上で執行猶予を付す場合が多いとされています。

教唆犯 [きょうさはん]

自分では犯罪を行う意思はないものの,他人に犯罪をそそのかして犯罪を実行する決意を生じさせ,その犯罪を実現した場合をいいます。

例えば、日ごろから憎らしく思っている人がいる者に対し,「そいつを殺してしまえ」と殺害をそそのかして,そそのかされた者がその気になり実際に殺害してしまった場合に,それをそそのかした者に教唆犯が成立します。

教唆犯には,犯罪を行った者と同様の刑が科されます(刑法61条1項)。

供述調書 [きょうじゅつちょうしょ]

検察官などの捜査機関が被疑者を取り調べるとき,被疑者の供述を記録するために,被疑者本人に確認の上作成するものをいい,供述録取書ともいいます。

被疑者が自ら供述書を作成することもできますが,通常は被疑者の供述に基づき検察官が調書を作成します。その場合,閲覧または読み上げによって被疑者が内容を確認したのちに署名押印し,被疑者は内容に間違いがある場合には署名押印を拒絶することができます。

署名押印された供述調書は,裁判のときに証拠として採用されます。特に,供述調書に記載された被疑者にとって不利となる証言は,一定の条件の下で裁判の資料になるため,裁判の行方を決定的にする場合さえあります。

したがって,安易に捜査機関の調書作成に協力し,調書に署名・押印をすることは厳に慎むべきです。

強制採血 [きょうせいさいけつ]

被疑者が飲酒運転の嫌疑により呼気検査等を拒んだ場合などに用いられ,体内のアルコールの残存状態の有無を確認するため,裁判所から鑑定処分許可状と身体検査令状の発付を受け,被疑者の同意なしに医学的手段によって血液を採取することをいいます。

強制採血では,必ず相手方の身体を損傷させることから,捜査手法として認められるか問題となりえますが,体内のアルコール分は消失が速く検知の緊急性が高いこと,採血の方法は身体に若干の傷を与えるもののその程度は軽微なものにとどまること,採取される血液も比較的少量であることから,裁判所の令状発付を基礎に一般的に広く行われています。

強制採尿 [きょうせいさいにょう]

捜査段階において,被疑者が薬物使用の嫌疑により尿の提出を拒否した場合等に,裁判所の捜索差押令状の発付に基づき,被疑者の同意なしに尿道用カテーテルを尿道に挿入して膀胱から直接尿を採取することをいいます。

上記のような手段を取ることから精神的な屈辱感を与えずにおかない採尿行為ですが,医師等の習熟した技能者によって適切に行われる限り身体的な危険性は比較的乏しいこと,他に有力な捜査方法がない以上,捜査の緊急的必要性から強制採尿も最後の手段として許容されるべきであること,強制採尿は,屈辱感等の精神的打撃を与える行為であるが,検証としての身体検査においても同程度の場合がありうることから,裁判所の令状発付を基礎に一般的に広く行われています。

強制捜査 [きょうせいそうさ]

強制処分を伴う捜査をいい,強制捜査の具体的な内容としては,被疑者の身柄確保のための逮捕・勾留,物証を確保するための捜索・差押え・検証などがあります。

そして,強制処分とは,被処分者の意思に反する重要な権利・利益を侵害する捜査手段をいいます。

被処分者の意思に反して重要な権利・利益を侵害することから,刑事訴訟法に特別の規定がなければ強制処分をすることはできません(刑事訴訟法197条1項ただし書)。

共同鑑定 [きょうどうかんてい]

複数の鑑定人の共同作業により一通の鑑定書を作成してもらう方法をいいます。

刑事裁判において,証拠として取り上げられることのある「精神鑑定」「法医学鑑定」「科学鑑定」「技術的鑑定」の結果が検察もしくは弁護人によって同意を得ず,再鑑定となった場合には,裁判の進行に時間的ロスを与え,証拠としての重要性を否定されることも考えられるので,あらかじめ鑑定の請求の際に,複数の鑑定人によって鑑定を実施させることで信用性を確保するために行われます。

共同正犯 [きょうどうせいはん]

2人以上の者が,共同してある特定の犯罪を行うことをいいます。

例えば,強盗に入ることを2人で相談し,犯行の準備をして,2人で押し入って金品を強奪した場合や,ひとりが相手を脅し,もうひとりが金を奪うというように役割を分担した場合に,2人はともに強盗罪の共同正犯として処罰されることになります。

両者が共同正犯として処罰されるのは,特定の犯罪(前記例では強盗罪)につき互いにその行為を利用・補充しあって結果を生みだした以上,すべての責任を負うべきであるからです(一部実行全部責任の原則)。

また、何ら犯罪行為を他の共犯と分担していない場合でも,犯罪の計画の策定に深く関わっている場合(いわゆる「黒幕」)にも,「共謀」共同正犯として自分自身で罪を犯したものとして処罰されます。犯罪をしたのは「黒幕」に命令されたからであり,「黒幕」も犯罪をするために行為者を利用しているからです。

共犯 [きょうはん]

複数人が同一の犯罪に関与する形態を指し,単独で犯罪を実現する単独犯の反対の概念です。

共犯は,必要的共犯と任意的共犯の2つに分類されます。必要的共犯とは,たとえば騒乱罪(刑法106条)や重婚罪(同法184条)のように,当該刑罰法規がもともと2人以上の者による犯行が不可欠であることを予定している場合であるのに対して,任意的共犯とは,一般の犯罪のように,刑法上は単独犯が予定されている犯罪を,2人以上の者が共同して実現する場合をいいます。

任意的共犯は,さらに共同正犯,教唆犯,従犯の3種類に分けられます。

共謀共同正犯 [きょうぼうきょうどうせいはん]

2人以上の者が特定の犯罪を実行することを共謀し,その共謀した者の中の一部の者が共謀した犯罪の実行にでた場合に,共謀に参加した者のすべてに共同正犯としての責任が認められる共犯の形態をいいます。

例えば,X,Y,Zが,Zの主体的な関与のもと強盗の共謀(隠れ家で強盗の犯罪計画を策定したりした場合)をし,Xが実行者,Yが見張り役,Zが盗品の換金役を行った場合,Zも強盗罪の正犯として処罰されます(共謀共同正犯)。

なぜなら,ZもX,Yとともに互いにその行為を利用・補充しあって結果を生みだした以上すべての責任を負うべきであるし(一部実行全部責任の原則),主体的に自己の犯罪として強盗の共謀をしたにもかかわらず正犯の責任を問えないとするのでは,適切な処罰を図ることができないからです。

緊急逮捕 [きんきゅうたいほ]

一定の重大な犯罪(死刑または無期若しくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪,例えば殺人罪や放火罪等)を犯したことを疑うに足りる十分な理由があり,しかも急速を要し裁判官に逮捕状を求めることができない場合に,被疑者にその旨を告げて,逮捕する手続をいいます(刑事訴訟法第210条)。

もっとも,逮捕後ただちに裁判官に逮捕状を請求する必要がありますし,逮捕状が発付されない場合にはただちに被疑者は釈放されなければなりません。

緊急避難 [きんきゅうひなん]

人や物から生じた現在の危難に対して,自己または第三者の権利や利益(生命,身体,自由,または財産など)を守るため,他の手段が無いためにやむを得ず何も悪くない他人やその財産に危害を加えたとしても,その行為により生じさせてしまった損害よりも避けようとした損害の方が大きい場合には犯罪とはならないというもので,違法性阻却事由の一つです(刑法37条1項本文)。

例えば,船が難破して乗客のAとBが海に投げ出され,そこにひとりならつかまって浮いていられるが,2人なら沈んでしまう程度の大きさの舟板が流れてきて,この板につかまって救助を待つよりほかに助かる術は無い場合,2人はこの板につかまろうとしたが,AはBを蹴り離して溺死させ,Aだけ助かったとき(いわゆる「カルネアデスの板」)を想定してみてください。

通常であればAには殺人罪が成立するはずですが,生命身体という正当な利益が危険に晒されており,その危険を回避する手段が他に無いためやむを得ずした行為ですので,社会的に相当な行為であるとして殺人罪は成立しません(違法性がない。)。

禁固 [きんこ]

受刑者を刑事施設に拘置する刑罰で,無期と有期とに分類されます(刑法13条)。有期禁固は,原則として1ヵ月以上20年以下の範囲で定められています。

禁固は懲役と異なり,懲役では「所定の作業」を行わなければならないのに対して,禁固ではただ拘置(監禁)することのみが定められていますが,受刑者の希望により刑務作業を行うことができます。

2014年に通常第一審事件の終局判決として禁固が確定した人員は、3124名です。このうち実刑判決は,3年超が5名,1年超3年以下が52名,1年以下が16名で,執行猶予を付された者は3051名,執行猶予率は97.7パーセントに達しています。

(ストーカー規制法における)禁止命令 [きんしめいれい]

ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」といいます)に規定されているストーカー行為を行った者に対し,警察が警告を行ったにもかかわらず,ストーカー行為をやめない場合,都道府県公安委員会が禁止命令を出すことができ,1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処せられます。

ストーカー行為とは,「つきまとい」行為を継続して行うことをいい,「つきまとい」に該当する行為としては,「今日はAさんと一緒に銀座で食事をしていましたね」と電話や電子メール等で連絡することや無言電話をかけること,わいせつな写真等を送りつけることが挙げられます。

上記のような行為にお困りの方は,被害がより深刻になる前に自宅の最寄りの警察署・警察本部に相談いただくことが必要です。

虞犯(虞犯少年) [ぐはん]

14歳未満の少年が将来法に触れる行為を行ったり,14歳から20歳未満の少年が将来犯罪行為を行うおそれが,特定の虞犯事由(例えば,保護者の正当な監督に服しない性癖のあること,正当な理由なく家庭に寄り付かないこと,犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し,いかがわしい場所に出入りすること,自己または他人の徳性を害する行為をする性癖のあること)により認められ,少年審判の結果によって保護手続の対象になる少年をいいます。

警察と検察 [けいさつとけんさつ]

警察と検察は捜査機関として協力する関係にありますが,警察が第一次的な捜査権を持つのに対して,検察の捜査権は補充的なものにすぎません。そして,検察は警察と異なり,罪を犯した疑いのある人物を裁判所の審判に服させるかどうか(起訴)を判断する権限を唯一持っています。

刑事事件 [けいじじけん]

国家が罪を犯した者に対し,その罪を問うのが刑事事件です。刑事事件と対比されるのが民事事件で,人と人が金銭等を巡って争う事件,例えば売買契約のトラブルで売主が買主に対して代金を支払えと請求するような事件をいいます。

刑事事件は,国家が罪を犯した者に対しその罪を問うという性質上警察が介入してきますが,民事事件には警察は原則として介入しません(民事不介入の原則)。

刑事補償 [けいじほしょう]

逮捕や勾留,受刑によって抑留,拘禁されたものの,裁判で無罪判決が確定した場合に,その者の請求に基づき国がその損害の埋合せのために行う給付をいいます。

刑事補償法でその補償額が定められており,例えば抑留・拘禁の場合は1日当たり1000円以上1万2500円以下の範囲内で補償され,罰金・科料の場合は支払った額に加え,1年につきその額の5パーセントの金額を補償すると定められています(刑事補償法4条)。

また,この規定は免訴または公訴棄却の裁判を受けた者であっても,免訴または公訴棄却の裁判がなければ無罪の裁判を受けるべき者と認められる者には準用されます。

軽犯罪法 [けいはんざいほう]

のぞきや,ゴミを廃棄する行為等のさまざまな軽微な秩序違反行為に対して拘留,科料の刑を定めている法律です。

なお,この法律の罪は,刑の執行猶予は許されませんが(刑法25条1項),情状に幅があるため,その刑を免除することも,拘留および科料の併科も可能です(2条)。また,この法律の罪の教唆または従犯は処罰されます(3条。なお刑法64条参照)。

刑務作業 [けいむさぎょう]

刑法に規定された懲役刑の内容であるとともに,受刑者の立ち直りおよび将来の社会復帰を図るための重要な処遇方策のひとつです。

受刑者に規則正しい勤労生活を送らせることにより,その心身の健康を維持し,勤労意欲を養成し,共同生活における自己の役割・責任を自覚させ助長するとともに,職業的知識および技能を付与することにより,円滑な社会復帰を促進することを目的としています。

受刑者はかかる刑務作業を通じて,職業訓練(溶接科,小型建設機械科,フォークリフト運転科,情報処理技術科,電気通信設備科,理容科,美容科,ホームヘルパー科等が設置されている)も受けることができ,将来の社会復帰に備えるとともに,自ら収入を得る手段を得ることができるため再犯のおそれも小さくなります。

刑務作業では,作業に就いた受刑者等には作業報酬金が支給され,その支給は,原則として釈放の際に本人に対してなされますが,在所中であっても,その趣旨を損なわない程度で,所内生活で用いる物品の購入や家族あての送金等に使用することも認められています。1日当たりの平均作業報酬金は約4700円になっています。

結審 [けっしん]

ひとつの刑事裁判において,すべての審理が終了し判決の言渡しが可能となることをいいます。

自分で罪を犯したことを認めている者の事件(自白事件)では,通常,結審まで1回の公判期日で終了します。裁判員裁判でも,重大な事件であるものの,事前に検察と弁護人が公判前整理手続によって事件の争点を絞り込むことから,平均して4回の公判審理で結審となります。

検挙 [けんきょ]

法律上の言葉ではなく,マスコミなどでよく用いられる用語で,警察が特定人を犯人と断定して逮捕または在宅で取り調べた場合をさすことが多いです。逮捕した場合と対比して後者を検挙ということもあります。

なお,警察統計では,犯罪について被疑者を特定し,検察官への送致,送付または微罪処分をするのに必要な捜査をとげた場合をいいます。

現行犯逮捕 [げんこうはんたいほ]

現に罪を行い,または現に罪を行い終わった者(現行犯)を逮捕することいいます。だれでも逮捕状なしに,現行犯人を逮捕することができます(刑事訴訟法214条)。

例えば、道路で人を刺した者を、その場で目撃した者が逮捕する場合等です。

逮捕状なしに逮捕できるとする理由は,逮捕をする人の目の前で犯罪が行われたのだから,犯人と犯罪行為との結びつきは明らかであり(明白性),逃走されるとあとで逮捕するのが困難になるから,その場で逮捕する必要(必要性)があるからです。

もっとも,明らかに逃亡のおそれも罪証隠滅のおそれもないときには,現行犯人であっても逮捕する必要はないので,一定の軽微な犯罪(例えば侮辱罪等)については犯人の住居もしくは氏名が不明,または犯人が逃亡するおそれがある場合に限り現行犯逮捕ができます。

また,一般の人が現行犯人を逮捕したときには,ただちに捜査機関に引き渡さなければなりません。

検察官 [けんさつかん]

法律に違反した犯罪や事件を,警察と協力して捜査し,もしくは自ら被疑者を取り調べ,被疑者の起訴・不起訴の判断を下し,起訴をした場合には公判の場で証拠を立証して被告側の弁護士と論争を行い,実刑判決が決定した場合の刑の執行の指揮を行います。

また,検察法における,検事総長,次長検事,検事長,検事,副検事の5つの官名の総称でもあります。

行政組織上の検察官は,建前上一人ひとりが独任制の官庁として単独で公訴を提起し公判を維持する権限を持ちますが,検察官の独善を防止し全体としての統一を図るために,上司が審査と助言・承認を行うことになっています。

「検察官徽章」は旭日に菊の花弁と葉があしらわれており,別名「秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)章」と呼ばれています。

検察審査会 [けんさつしんさかい]

検察官が独占する起訴の権限(公訴権)の行使に民意を反映させ,また不当な不起訴処分を抑制するために,地方裁判所またはその支部の所在地に設置される,無作為に選出された国民(公職選挙法上における有権者)11人によって構成される機関をいいます。

刑事事件について,裁判所へ公訴を提起(起訴)する権限は,原則として検察官にしか認められていないので,犯罪被害者等が,特定の事件について告訴を行うなど裁判がなされることを希望しても,検察官の判断により不起訴・起訴猶予処分等になり公訴が提起されないことがあります。

このような場合に,検察官の不起訴判断を不服とする者の求めに応じ,判断の妥当性を審査するのが検察審査会の役割です。検察審査会は,審査ののち以下の3つの議決を行うことが出来るとされています。

1.起訴を相当と認める時は「起訴を相当とする議決」(起訴相当)
2.公訴を提起しない処分を不当と認める時は「公訴を提起しない処分を不当とする議決」(不起訴不当)
3.公訴を提起しない処分を相当と認める時は「公訴を提起しない処分を相当とする議決」(不起訴相当)

議決は過半数(6人以上)で決するとされていますが,「起訴相当」とする議決は,8人以上(3分の2以上)の多数によらなければならないとされています。

「不起訴不当」と「起訴相当」の議決がなされた事件について,検察官は再度捜査を行い,起訴するかどうか検討しなければなりません。

「起訴相当」と議決した事件について,再度捜査をした検察官から,再び不起訴とした旨の通知を受けた時は,検察審査会は,再び審査を実施することとなります。

この際,専門家として弁護士を審査補助員に委嘱して審査を行い,再び「起訴相当」と判断をした場合は,検察官に検察審査会議に出席して意見を述べる機会を与えたうえで,今度は8人以上の多数で「起訴をすべき議決」(起訴議決)がされ,強制的に起訴されることになります。

検視 [けんし]

検察官,またはその代理人によって行われる死体の状況捜査のことをいいます。検視には行政検視と司法検視とがあります。

行政検視とは,犯罪と無関係なことが明らかな死体について警察官がおこなう検視をいい,死因の確認や身元の照合のために行われます。

司法検視とは,死亡の原因が犯罪によるものだと断定できない不自然な死体について検察官が行う検視(刑事訴訟法229条1項)をいいます。検察官は,検察事務官または司法警察員に命じて検視をさせることができます。

死亡の原因が犯罪によるものだと断定できない不自然な死亡(変死または変死の疑いのある死)について,検視の結果犯罪によっての死亡だと判明すると捜査が開始されることとなります。

検事調書 [けんじちょうしょ]

検察官が供述を録取して作成し,検察官が供述者にその調書を読み聞かせたうえで供述者が署名押印をした調書のことをいいます。

供述調書には,同様に警察官等が作成する司法警察員面前調書などもありますが,刑事訴訟法は検面調書の証拠能力について強い効力を認めています。供述調書というのは,裁判所の面前で反対尋問を経ていない伝聞証拠ですので,公判手続において不同意とすれば証拠として採用されないのが原則です。

しかし,被告人以外の供述にかかる検面調書については,公判手続において検面調書を不同意としても,供述者が検事調書と異なった内容の供述をした場合に,検事調書が特別に信用できる情況下(特信情況)で作成されたと認められれば,証拠として採用されてしまうのです。

そして,実際の運用においては,特信情況が認められるとして検面調書が重視されるいっぽう,法廷での証言が軽視される傾向があり,検察側に有利な運用となってしまっているため,このような運用は,裁判の前に作成された調書が不当に重視される調書裁判であると批判されています。

現場検証 [げんばけんしょう]

犯行が行われた場所等において,その存否や形状・性質などを五感(視覚,聴覚,触覚,嗅覚,味覚)によって認識する強制処分です。

検証には,捜査機関による検証と,裁判所・裁判官が行う検証があります。捜査機関による検証の場合には,検証は強制処分であるので,裁判官の発する令状によって行われます(刑事訴訟法218条1項)。いっぽう,裁判所・裁判官による検証の場合には,裁判所等が直接行う証拠調べの一種であるので,公判廷外で行われるとしても令状は必要ありません。そして,検証の対象者や対象物に関係する者は検証につき受忍義務があります。

現場検証の内容は検証調書に記載され,その記載内容は公判廷において証拠となります。また,被疑者・被告人側も,あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは,第1回公判期日前に限り,裁判官に対して検証を請求することができます(同法179条)。

検証と同じ行為が任意処分として行われる場合があり,そのような行為を警察実務では実況見分と呼んでいます。

たとえば,道路で交通事故の状況を認識するために計測したり,記録したりする作業は,公共の場所で行うことから強制力を必要としないので,検証ではなく実況見分ということになります。

原判決破棄 [げんはんけつはき]

刑事訴訟法上,控訴裁判所(高等裁判所)または上告裁判所(最高裁判所)が上訴に理由があると認めて,原判決を破棄する判決のこと(刑事訴訟法397条,410条,411条)をいいます。

破棄した場合の措置には,破棄差戻し(同法398条,400条,413条)・破棄移送(同法399条,400条,412条,413条)・破棄自判(同法400条,413条)の3種類があります。

控訴裁判所では,控訴に理由がある場合に,判決で原判決を破棄しなければなりません(同法397条1項)。また,控訴裁判所が,第一審判決後の量刑に影響を及ぼすべき情状を職権で取り調べた結果,原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認めるときは,判決で原判決を破棄することができます(同法397条2項)。

上告裁判所では,上告に理由がある場合に,判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合を除いて,判決で原判決を破棄しなければなりません(同法410条1項)。

しかし,405条2号または3号に規定する事由のみがある場合(すなわち判例違反の事由だけがある場合)に,上告裁判所が原判決を維持するのを相当とするときは,従来の判例を変更して上告を棄却することになります(同法410条2項)。

また,上告裁判所は,405条各号に規定する事由がない場合でも,(1)判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること,(2)量刑が甚だしく不当であること,(3)判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること,(4)再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること,(5)判決があった後に刑の廃止もしくは変更または大赦があったことのいずれかの事由がある場合に,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは,判決で原判決を破棄することができます(同法411条)。

故意犯 [こいはん]

特定の犯罪を行うことを認識し,かつ認容して犯罪を実行する場合をいいます。つまり,自分の行為が刑法で禁止されていることを知りつつ犯罪を行う場合です。

たとえば,人を殺すことは殺人罪にあたり刑法で禁止されていますが,これを知りつつあえて人を殺した場合には殺人罪の故意犯として処罰されます。

刑法は故意犯の処罰を原則としていますが,一定の重大な犯罪(殺人罪や強盗罪等)については,犯罪結果発生の現実的危険性のある行為を行い,それが生じたことを理由に処罰する未遂犯の処罰規定を設けています。

勾引 [こういん]

被疑者・被告人・証人など特定の者を裁判所など一定の場所に連れてくるように命じる裁判とその執行をいいます。

勾引は勾引状を発付して行われ,逮捕勾留と違い犯罪の嫌疑を要求しないので,たとえ無罪判決を言い渡す場合でも被告人が召喚に応じなければ勾引できます。

被告人の勾引についてみると,被告人が住居を持たないとき,正当な理由なく召喚に応じないか,応じないおそれがあるときなどに,裁判所は被告人を勾引することができます。

勾引した被告人は勾留状が発せられた場合を除き,裁判所に連れてこられたときから24時間以内に釈放しなければなりません。

控訴 [こうそ]

第一審裁判所(地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所)が言い渡した判決に対し不服がある場合に,高等裁判所へ判決の確定を止めて新たな判決を求める不服申立をいいます(刑事訴訟法372条)。

判決の言い渡しを受けてから14日間以内に被告人または検察官が控訴することができ(同法351条),第一審における弁護人,被告人の法定代理人・補佐人も,被告人のために控訴することができます(同法355条,353条)。

この期間内に,控訴審を担当する裁判所(控訴裁判所)宛ての控訴申立書を,第一審の裁判所に提出して控訴の提起をします(同法374条)。さらに,控訴申立人は,提出期限(通知の翌日から21日以後の日で,控訴裁判所が定めた日)までに,控訴趣意書を提出しなければなりません(同法376条)。

控訴期間 [こうそきかん]

第一審裁判所(地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所)が言い渡した判決に対して不服がある場合に,判決の確定を止めて新たな判決を求める高等裁判所への不服申立である控訴をできる期間をいい,判決の言い渡しを受けてから14日間(判決の言い渡しを受けた日の翌日から14日以内)となっています。

この期間内に,控訴を行うことができる被告人,検察官,第一審における弁護人,被告人の法定代理人・補佐人は控訴をするかどうかを判断することとなります。

現実には,判決を言い渡された段階では多くの場合判決書もない状態で判断する必要があるため,被告人が納得できなければ控訴するということになります。控訴審では,弁護人の選任は新たにやり直すことになりますので,弁護人が控訴審も弁護する意思があるかや,被告人が同じ弁護士に依頼したいかどうかも控訴期間中に話し合います。

控訴棄却 [こうそききゃく]

第一審裁判所(地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所)が言い渡した判決に対し不服がある場合に,判決の確定を止めて新たな判決を求め,高等裁判所への不服申立を行う控訴が控訴審によって受理されず,手続が打ち切りになることをいいます。受理せず審理に入らないのでいわゆる門前払いとなります。

控訴の申立の方法が,法令で定められている方式に違反した場合や,控訴期間である判決言い渡し後14日以後になされたものである場合,控訴趣意書を提出しない場合には,控訴棄却の決定がされることになります(刑事訴訟法385条,386条)。

公訴棄却 [こうそききゃく]

検察官が裁判所に対して,犯罪を行った疑いのある人物につき裁判所の審判を求める公訴の提起が,裁判所によって受理されず,手続が打ち切りになることをいいます。

受理せず審理に入らないのでいわゆる門前払いとなります。

公訴棄却の決定には,判決と決定の2種類があります。被告人に対し裁判権がないとき,すでに公訴が提起された事件につき,更に同一裁判所に公訴が提起されたとき等には判決で公訴が棄却されます。

また,起訴状謄本が,公訴が提起されてから2ヵ月以内に被告人へ送達されず公訴が無効となったとき,起訴状記載の事実が何らの罪にもならないとき,被告人が死亡したとき等には,決定で公訴が棄却されます。

控訴趣意書 [こうそしゅいしょ]

控訴の申立をした者が,裁判所に提出する控訴の理由が記載された書面のことをいいます。

控訴が行われると,高等裁判所に事件記録が送られ,高等裁判所が事件記録を受け取ってから控訴趣意書の提出期限を定めることになります。控訴趣意書を裁判所が定めた期間内に提出しないと,控訴は棄却されてしまします。

なお,控訴趣意書の提出期限については,弁護人と裁判所との間で交渉の余地があります。実際には,事件記録が分厚い事件や,弁護人が交替した場合などではそれ相応の期間が必要ですし,また,多くの事件で控訴を申し立てた時点では判決ができておらず,判決書がない段階では控訴趣意書の書きようがありませんから,控訴趣意書の提出期限は一律には決まらないのです。

控訴の理由については,手続上の問題や法律解釈の誤りを主張することもありますが,多くの場合,刑が重すぎるということ(量刑不当)か,事実認定が間違っているということ(事実誤認)になります。

控訴審 [こうそしん]

すでに第一審で審理・判決を受けた事件に対する不服申立(控訴)を受けて審理をする第二審の裁判所のことで,多くは高等裁判所になります。

すでに一審で審理・判決まで行っているという特殊性から,控訴審には一審にはない制限があります。

控訴審は,申立人が控訴趣意書において主張した事項のみを調査し,原判決を破棄する場合には原則として自ら判決せず,一審に差し戻されることとなります。

また,控訴審では一審判決前にあった証拠で一審に提出されていないものについては,取り調べ請求をしなかったことにやむを得ない事情がある場合のみ,提出できることになっています。

控訴理由の多くは,刑が重すぎるということ(量刑不当),事実認定が間違っているということ(事実誤認)ですので,以下2つの場合について説明します。

一審判決後に量刑に影響を与える事情が変わったということは,裁判所が必要と認めれば取り調べできますし,その結果,一審判決を破棄しなければ明らかに正義に反するときは一審判決を破棄することができます。

実際にも,一審で被害者と示談できなくて実刑判決を受け,一審判決後に被害者と示談して刑を軽くしてもらうというパターンがよく見られます。こういうケースでは比較的一審判決破棄という結論を得やすいです。

事実誤認の主張の場合,新たな証拠を請求できて,裁判所にそれに意味があると説得できれば,その証拠を取り調べるということになります。

公訴の提起 [こうそのていき]

検察官が,犯罪を行った疑いのある者につき,裁判所に対してその審判を求める手続をいい,一般には単に「起訴」といわれています。

公訴の提起は,検察官が起訴状を裁判所に提出して行います。その際には,裁判官が審理にあたるに際し先入観を持つ(「予断」といわれます)のを防止するため,起訴状にそうした予断を持つおそれがある余事記載や,証拠その他の書類などを添付することは許されません(起訴状一本主義と呼ばれます)。

裁判の迅速化のため,検察官は公訴の提起と同時に略式手続や即決裁判手続の請求を行うこともできます。

拘置所 [こうちしょ]

主として刑事裁判が確定していない未決拘禁者(被疑者・被告人)を収容する法務省所管の施設をいいます。全国に8ヵ所設置されており,東京では小菅に東京拘置所,立川に立川拘置所が設けられています。

拘置所と同様に未決拘禁者を収容する施設として各都道府県警察内に設置されている留置場(全国に約1,300ヵ所)があります。

拘置所と留置場では,留置場が警察という捜査機関の管理下にあるのに対し,拘置所は法務省の管理下にある点で違います。

勾留の目的が捜査のために逃亡・罪証隠滅のおそれを防止することにあり,捜査機関による取り調べにあるものでないこと,被疑者を警察の管理下である留置場で勾留することは,精神的圧迫により自白を強要することにつながりかねないことからすれば,拘置所を勾留の場所とするのが妥当ですが,拘置所の数が警察の留置場の数より著しく少なく,被疑者勾留を拘置所で行うというのは現実的とはいえないのが現状です。

実務的には,検察官が自ら捜査する事件については拘置所に収容しますが,警察が行う大部分の事件については,留置所を勾留の場所として指定し,起訴後に,拘置所に被告人を移送するという運用が行われています。

公判 [こうはん]

刑事訴訟において,裁判所で裁判官,検察官,被告人,弁護人が集まり,審理を行うために法廷で行われる手続をいいます。また,公判において,検察官・弁護人が訴訟行為を行うために設定される期日のことを「公判期日」,公判のために開かれる法廷のことを「公判廷」といいます。

自ら犯罪を行ったことを認めている事件(自白事件)については,通常審理と判決の2回の期日で終わり,犯罪を行ったことを認めていない事件(否認事件)についても,一般的な事件では3回程度の公判で終わることが多いです。

裁判員裁判の対象となる重大な事件では,審理を尽くすために平均して4,5回の公判が行われています。

公判前整理手続 [こうはんまえせいりてつづき]

第一回公判期日前に,事件の争点および証拠を整理するために行う公判の準備をいいます。

その目的は,審理を迅速かつ充実したものにすることにあり,裁判員の参加する裁判手続においては必ず公判前整理手続に付さなければなりません(裁判員法49条)。

なぜなら,市民が本業を休み,裁判員として審理に参加するわけですから,裁判員のために,審理に要する期間をあらかじめ示す必要があるからです。また,迅速で素人にもわかり易い審理を進めるためにも争点整理が不可欠だからです。

公判前整理手続においては,検察官,弁護士双方が出席し,提出予定の証拠や主張を開示しあい,事件の争点を明確にし,公判廷で本当に審理しなければならない事項を絞り込んでいきます。

勾留 [こうりゅう]

犯罪を行った疑いのある人(被疑者・被告人)の身柄を拘束する処分で,被疑者の勾留と被告人の勾留とがあります。

その目的は,被疑者・被告人の逃亡を防止し,被告人が公判廷に確実に出頭するように身柄を確保することと罪証隠滅の防止にあります。

被疑者の勾留と被告人の勾留との間の大きな違いは(1)その期間と(2)被告人の勾留においては保釈が認められていることです。

被疑者の勾留は,逮捕に引き続き行われるもので,罪を犯したことが疑われ,かつ,証拠を隠滅したり逃亡したりするおそれがあるなどの理由から,捜査を進めるうえで身柄の拘束が必要な場合に,検察官の請求に基づいて裁判官がその旨の令状(勾留状)を発付して行います。

勾留期間は原則10日間ですが,やむを得ない場合は,検察官の請求により裁判官が更に10日間以内の延長を認めることもあります(内乱罪等のごく例外的な罪については,更に5日間以内の延長も可能です)。

これに対し,被告人の勾留は,起訴された被告人について裁判を進めるために身柄の拘束が必要な場合に行われます。勾留期間は原則2ヵ月で,特に証拠を隠滅するおそれがあるなど必要性が認められる限り,1ヵ月ずつ更新することが認められています。

勾留延長 [こうりゅうえんちょう]

まず,勾留とは犯罪を行った疑いのある人(被疑者・被告人)の身柄を拘束する処分で,被疑者の勾留と被告人の勾留とがあります。

被疑者の勾留は,原則10日間ですが,やむを得ない事情があると認められるときには,検察官の請求により勾留期間を10日間以内で延長することができます(内乱罪等のごく例外的な罪については,更に5日間以内の延長も可能です)。

かかる勾留延長に対して,弁護人は勾留に対する準抗告勾留取消請求,勾留の執行停止を求め被疑者の身体の早期の解放に努めることになります。

また,被告人の勾留は,原則2ヵ月間ですが,特に証拠を隠滅するおそれがあるなど必要性が認められる限り,1ヵ月ずつ更新することが認められています。

かかる勾留に対し,弁護人は,勾留に対する抗告,勾留の取消,保釈,勾留の執行停止を求めることによって被告人の身体の早期の解放に努めることとなります。

勾留期間 [こうりゅうきかん]

まず,勾留とは犯罪を行った疑いのある人(被疑者・被告人)の身柄を拘束する処分で,被疑者の勾留と被告人の勾留とがあります。

被疑者の勾留は原則10日間ですが,やむを得ない事情があると認めるときには,検察官の請求により勾留期間を10日間以内で延長することができます(内乱罪等のごく例外的な罪については,更に5日間以内の延長も可能です)。

また,被告人の勾留は原則2ヵ月間ですが,特に証拠を隠滅するおそれがあるなど必要性が認められる限り,1ヵ月ずつ更新することが認められています。

勾留執行停止 [こうりゅうしっこうていし]

裁判所が,たとえ勾留の理由はあっても勾留を一次中断するのが適当と判断する場合に,勾留されている被告人を親族,保護団体その他の者に委託し,または被告人の住居を制限して,勾留の執行を停止することをいいます。

実務上,勾留の執行停止がされるのは,病気治療のため入院が必要とされる場合やご家族が亡くなられた場合であることが多いです。

この制度は,裁判所の職権によりますが,期間や条件を付することもできますので,被告人と異なり,被疑者には保釈は認められていないことから保釈の代用として柔軟に運用されることが望ましいといえます。弁護人としては,裁判所の職権発動を促すべく活動することとなります。

勾留質問 [こうりゅうしつもん]

検察官の勾留請求に対し,裁判官または裁判所が,被告人に対し被告事件を告げ,これに関する被告人の陳述を聞く手続をいいます。

この点,勾留とは犯罪を行った疑いのある人(被疑者・被告人)の身柄を拘束する処分で,被疑者の勾留と被告人の勾留とがあります。

勾留を許可するのは,被疑者の勾留の場合には裁判官,被告人の勾留の場合には裁判所です。

被疑者・被告人にとっては,捜査機関の手を離れた公平な第三者である裁判官に弁解を聞いてもらう機会ですのでとても重要です。

勾留状 [こうりゅうじょう]

裁判官が勾留を許可する際に発付する令状をいいます。

勾留とは,犯罪を行った疑いのある人(被疑者・被告人)の身柄を拘束する処分で,被疑者の勾留と被告人の勾留とがあります。

検察官から勾留請求を受けた裁判官・裁判所は,被疑者・被告人に勾留質問を行い,勾留する理由があると判断した場合には,上記勾留状を発付し勾留を許可することになります。

勾留状には,被疑者・被告人の名前・犯罪名,被疑事実(起こしたと疑いを掛けられている犯罪の内容)の要旨,勾留の理由,勾留の期間,どこで勾留されるのか等が記載されています。

勾留状謄本請求 [こうりゅうじょうとうほんせいきゅう]

勾留状が発付された場合に被疑者・被告人(弁護人)が行うことができる勾留状の写しを裁判所に請求することをいいます。

勾留状謄本には,被疑者・被告人の名前・犯罪名,被疑事実(起こしたと疑いを掛けられている犯罪の内容)の要旨,勾留の理由,勾留の期間,どこで勾留されるのか等が記載されています。

警察の留置場に勾留されている被疑者から刑事弁護の依頼を受けた際に,捜査機関の取り調べや身体拘束によって疲弊し混乱した被疑者と接見をしても,自身で何の犯罪でいま取り調べを受けているのかよくわかっていないことがあります。

そこで,自分の依頼者がどのような犯罪で取り調べを受けているのか把握するために,弁護人は裁判所の勾留部に勾留状謄本を請求します。

勾留状謄本には上述のように被疑事実が記載されてるので,弁護人はこれを見て初めて被疑者がどういう事実で勾留されているかを正確に把握できるのです。

勾留請求 [こうりゅうせいきゅう]

検察官が裁判官・裁判所に勾留を請求することをいいます。

勾留とは,犯罪を行った疑いのある人(被疑者・被告人)の身柄を拘束する処分で,被疑者の勾留と被告人の勾留とがあります。

検察官は,被疑者・被告人に定まった住居がない場合,犯罪の証拠を隠滅すると疑うに足りる相当の理由がある場合,隠滅逃亡しまたは逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合には,勾留を請求します。勾留の請求は,被疑者の勾留であれば裁判官に,被告人の勾留であれば裁判所に行うことになります。

勾留取消 [こうりゅうとりけし]

勾留の理由または勾留の必要がなくなったときに,裁判所が検察官,被疑者・被告人(弁護人)の請求または裁判所の職権で勾留を取り消すことをいいます(刑事訴訟法87条)。

また,勾留が不当に長くなったときに,裁判所は,検察官,被疑者・被告人(弁護人)の請求または裁判所の職権で勾留を取り消します(同法91条)。

弁護人は,勾留されている被疑者・被告人の身体の早期解放のために,裁判所に対して勾留取消請求を行うこととなります。

勾留場所 [こうりゅうばしょ]

被疑者・被告人が勾留をされている場所をいいます。被疑者・被告人はまだ裁判所からの判決の確定を受けていません(未決拘禁者といいます)。このような未決拘禁者を収容する施設に拘置所(全国に8ヵ所)と留置場(全国に1,300ヵ所)があります。拘置所と留置場では,留置場が警察という捜査機関の管理下にあるのに対し,拘置所は法務省の管理下にある点で違います。

勾留の目的が捜査のために逃亡・罪証隠滅のおそれを防止することにあり,捜査機関による取り調べにあるものではないこと,また,被疑者を警察の管理下である留置場で勾留することは,精神的圧迫により自白を強要することにつながりかねないことからすれば,拘置所を勾留の場所とするのが妥当ですが,拘置所の数が警察の留置場の数より著しく少なく,被疑者勾留を拘置所で行うというのは現実的とはいえないのが現状です。

実務的には,検察官が自ら捜査する事件については拘置所に収容しますが,警察が行う大部分の事件については,留置所を勾留の場所として指定し,起訴後に拘置所へ被告人を移送するという運用が行われています。

勾留理由開示 [こうりゅうりゆうかいじ]

公開の法廷で裁判官が勾留の理由を説明し,それに対して弁護士と被疑者が意見を述べることができる手続をいいます。

勾留理由の開示は,被疑者・被告人(弁護人)の請求をもってなされ,裁判官および裁判所書記官が出席した公開の法廷で行われます。

勾留理由開示は,あくまでも裁判官が理由を説明するという手続で,勾留そのものを争う手続ではありません。しかし,逮捕容疑が弱い事件においては裁判官と実質的なやりとりをできる場合もありますし,勾留の必要性につき裁判官に再考を求めることができます。

また,身体を拘束され,捜査機関の取り調べで疲弊している被疑者・被告人に外部の空気を吸ってもらい,傍聴席にいる家族や親族と顔を合わせることもできることから,精神衛生面からも請求に重要な意味があります。

呼気検査 [こきけんさ]

主に酒気帯びの有無を調べるために,息を吐かせてその成分を検査することをいい,いわゆる風船を膨らまして吐いた息のアルコール濃度調べる検査方法です。

道路交通法第67条第3項において規定があり,警察官は,車両等に乗車し,または乗車しようとしている者が,酒気帯び運転等をする恐れがあると認められるときは,その者の体内アルコール保有量を調査するため,その者の呼気を検査することができるとされています。

ちなみに,酒気帯び運転における道路交通法上の処罰基準は,呼気1リットル中、0.15ミリグラム以上の場合となっています。

告訴 [こくそ]

被害者やその法定代理人が,捜査機関に対して犯罪の被害を報告して,その処罰を求める意思表示をすることをいいます。

告訴権者は,犯罪の被害者および被害者の法定代理人等に限定されています。法律上は口頭でも書面でも告訴は可能ですが,実際には口頭による告訴は多くはありません。口頭で行われた場合は調書が作成されます。

告訴が行われると捜査が開始され,警察は,速やかに関連書類および証拠物を検察官に送付しなければなりません。また,検察官は起訴・不起訴処分を告訴した者に通知する義務があり,さらに,請求があれば不起訴理由を告知しなければなりません。

なお,告訴は,被害関係者であることを問わず,誰にでも行うことができる告発とは異なる制度です。

告発 [こくはつ]

告訴ができる者および犯人以外の者が,捜査機関に対して犯罪事実を申告し,訴追を求める意思表示することをいいます。

犯罪を認識した人は,誰でも告発を行うことができます。一定の被害関係者のみが行う,告訴とは意味が異なります。