わいせつ画像・児童ポルノ提供等
わいせつ物頒布等の罪(刑法175条1項),児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)違反
(1)罪の概要説明
まず,インターネットのホームページ上に性交や性交類似行為,無修正の局部等のわいせつな画像を搭載すると,刑法上のわいせつ物頒布等の罪に問われることになります。
こうしたわいせつ画像を,不特定または多数の人へのメール送信する場合も同様です。また,販売目的でわいせつ画像を所持したり,パソコンなどに保存した場合も同様の罪に問われます。法定刑は2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料,または懲役および罰金の併科となっています。
さらに画像や写真の被害者が,18歳未満少年・少女の場合には,児童買春・児童ポルノ禁止法により,わいせつ物頒布等の罪よりも厳しい刑が定められています。たとえば,特定の個人に児童ポルノを提供しただけでも,3年以下の懲役または300万円以下の罰金に問われますし,不特定多数に提供すると,5年以下の懲役または500万円以下の罰金に問われます。
また,児童買春・児童ポルノ禁止法では,児童ポルノの画像や写真を第三者に提供しなくても,少年・少女にみだらな姿態をとらせ,その写真や画像を作成する自体も処罰の対象としています。
児童ポルノを含め,わいせつ画像がインターネットを通じて転々流通する関係で,わいせつ画像を単に(提供の目的なく)所持していたケースなど,本来処罰されない場合であっても,わいせつ画像を提供したまたは提供する目的で所持していたとの容疑をかけられる可能性があります。また,ウィニーなどのファイル共有ソフトでわいせつ画像を所持していた場合は,ソフトの設定によっては,わいせつ画像を公然と陳列していたとの容疑をかけられてしまうこともあります。
(2)弁護方針
まず,児童ポルノではなく,成人のわいせつ画像が問題となる場合です。実際には,不特定多数の人に提供する目的で,わいせつ画像を所持していたわけではないにもかかわらず,捜査機関から一方的に容疑をかけられてしまった場合,所持の目的が,個人的かつ私的な範囲内にすぎないことを客観的事情から主張し,不起訴処分を目指します。
所持していたわいせつ画像の内容や数によっては,捜査機関から組織的な関与の疑いをかけられることもあるため,早期に弁護人が本人と面会して事件の全容を伝え,捜査機関に対して組織的な関与はない旨の主張を行い,迅速な釈放を図る必要があります。
つぎに,被害者が18歳未満の少年・少女の場合には,児童買春・児童ポルノ禁止法が関わってきますので,18歳未満であるとは知っていたかどうかが,ポイントとなります。被害者が18歳未満であるとは本当に知らなかった,知りようがなかった場合には,そうした主張を捜査機関や裁判所に対して行い,刑事責任を争うこともあります。
しかし,実際はパソコンや携帯電話に残ったメール履歴や画像の投稿サイト,行為当時の相手方の服装・外見などでこうした主張をするのはかなり難しい場合があります。その場合には,(1)被害者である少年・少女やその保護者との間で,示談交渉を行う,あるいは(2)少年・少女を性的対象とするようなポルノ画像の作成や提供を今後一切行わないように,ご親族の監督を求める,(3)カウンセリングに通うことを約束してもらうといった情状弁護が中心となります。