身柄事件と在宅事件の違いについて
身柄事件・在宅事件とは
身柄事件とは,逮捕・勾留され,警察署の留置所または拘置所に身体を拘束されて取調べを受ける事件です。これに対して,在宅事件とは,事件当事者が身体を拘束されずに,通常通りの生活を送りながら捜査される事件であり,取調べは警察や検察から呼び出されて行われます。
身柄事件と在宅事件の共通点
刑事事件というと,捜査機関に逮捕・勾留される身柄事件を思い浮かべる方が多いと思いますが,比較的軽微な犯罪では在宅事件の扱いになることも少なくありません。実際のところ,平成29年版の犯罪白書によれば,全被疑者に占める身柄事件の比率は,36.2%にしかなりません。本来的には,身体を拘束されてしまうのが例外で,逃亡や証拠隠滅のおそれがない方については,在宅のまま捜査が進められるからです。
つまり,身柄事件と在宅事件とは,身体が拘束されているか否かという区別に過ぎず,両方ともに刑事事件であることに変わりがないのです。そのため,身柄事件と同じように,在宅事件であっても送検され(書類送検),事案により在宅のまま起訴されることがあります(在宅起訴)。また,当初は在宅捜査がされていても,捜査の進展により逮捕されてしまう場合もあります。
身柄事件と在宅事件の違い
在宅事件には,身柄事件と比べて次のような違いがあります。
- 事件が長期化します
身柄事件であれば,逮捕から始まる身体の拘束期間が起訴前で最大23日間と定められているのに対して,在宅事案にはそのような定めがありません。多くの場合,捜査の開始から起訴するか不起訴にするか最終的に決めるまでに数ヵ月がかかり,不安な状態が続くことになります。
- 弁護士選任のチャンスを逃しがちです
在宅事件では,身柄事件とは異なり,起訴前には国選弁護人の制度がありません。そのため,私選弁護人を選任しない限り,弁護活動のチャンスが得られません。
弁護人が行う弁護活動は,警察や検察から嫌疑をかけられた事件について無実であれば,依頼者の方の無実を検察官に納得させ,不起訴処分の獲得を目指します。また,嫌疑をかけられている犯罪事実に間違いがないのであれば,起訴前に被害者と早期示談をし,事件を起こした当事者の性格,年齢,境遇,犯罪の状況など考慮されるべき事情を立証します。そして,「起訴してまで刑罰を科す必要はない」と検察官を納得させ,不起訴処分の獲得を目指します。
中でも,被害者の方との示談が成立していることは,不起訴処分の獲得において重要なポイントになります。そして,示談交渉を行う際に必要な被害者の方の連絡先は,弁護士でなければ,検察官から入手するのは非常に難しいのです。